s-162-esmode-04 Interview 

 

エスモード インターナショナル代表  仁野 覚

世界がうらやむ、

日本人ならではの感性を研ぎ澄ませ!

若きデザイナーたちよ、世界と切磋琢磨すべし

 パリに本校を構える世界最古のファッションスクール、エスモード。日本人でありながら170年以上の歴史をもつ由緒ある学校の代表を務め、モードをこよなく愛する仁野覚氏が、海外からの視点で日本のファッション産業の可能性、次世代デザイナーへの期待を語る

 

仁野 覚 Satoru Nino

 

大阪芸術大学でアートを学んだ後パリに渡り、エスモード パリのデザイン科卒業。フランスでファッション関係のエージェント会社を経営し、1984年にエスモード ジャポン東京校、1994年に大阪校を設立。功績と実績が認められ、2000年にエスモード インターナショナルの代表に就任。世界15カ国22校を展開する。

  

 

—パリを拠点にスクールビジネスを展開されていますが、フランスと日本のファッション産業の大きな違いとは何でしょうか。

 「まず、フランスのオートクチュールそのものが150年近い歴史があり、国家としてのファッションに対する認識とノウハウの積み重ねが日本と大きく違います。フランスの行政では、ファッションやスポーツ、医療など各界に精通したエキスパートが就任しているので、現場の要望に敏感に反応し政策に反映しています。しかし、日本ではファッションの専門ではない方が担任になられ、任期も短く、エキスパートになるにも時間がかかります。それに、ファッション産業自体の歴史も短く、50年前までは欧米のコピーをビジネスとしていましたので、新しいものを創造していく概念が弱かった。1980年代から、クリエーターという職業名が出てきて、デザイナーよりももっとコンセプチュアルな仕事をする人が現れてきました。資本主義社会が成熟していく中で、新しい時代の新しい価値を提案していくべきと、求められる範囲が技術や素材から、より知的な部分の仕事に変容してきました。同時に市場が多様化している今、日本の産業界も真剣に世界を見据えて海外戦略を立てる必要があるのではないでしょうか。残念ながら、そのような意識をもった企業が少ないのは、日本の約1億人という市場規模で完結できてしまうからです。ヨーロッパの小さい国々は、自国のみで考えず、最初から海外市場を狙って商品を作る意識が根付いています。国内での成功の先に海外をも視野に入れる意識こそ、日本の産業界全体の底上げにつながると思います」

 

—日本の物作り精神が世界で評価されていますが、次世代デザイナーの可能性をどのように捉えていますか?

 「日本人はフランスにおいても創造性、技術力の評価が非常に高いです。まじめで地道で努力を惜しまず、約束は必ず守る。他人を思いやることができる気持ちがあるので、チームワークという点でも優れています。パターンに関しても緻密で技術が高く、日本人特有の完璧主義的な物作りがとても素晴らしいです。フランスでも日本人のパタンナーを雇いたいという声は多いです。感性や意欲があり、いい部分をたくさんもっています。ファッションの世界でキャリアを継続するための目標をしっかり考えて実行すれば必ず成功します。ファッションは競争の世界です。オリジナリティや表現力が問われます。設定する目標を高くもち、夢の実現のために努力を重ねれば、道は開けます」

 

—逆に世界中から集まるデザイナー志望の生徒と比べ、日本人に足りないと思うことは何でしょうか。

 「自己表現力ですね。日本の基礎教育や家庭教育において、ディベートする、理論的に考えるというトレーニングが弱いからだと思います。『人と違っていい』という独自性をもつことが大切で、周りと比べたり、先生に迎合してしまうのはもったいない。人間は一人一人違って当たり前ですから、その違いを磨く方向にマインドをもっていってほしい。授業でも、先生が生徒の作品を批評するのですが、ネガティブな意見を言われると、作品のことなのに自分自身が否定されているように解釈する日本人が多いです。ファッションとは主観的なもので、正解はありません。色々な見方がある中で、自分と対極の意見があることを知り、相対化していくことで自分は何をチョイスすべきか選択肢が養われます。人の意見を絶対とせず、独立した人格を作り、自分の世界を確立することがファッションの世界では重要です。いくら技術的に卓越していても、主体性がなければ、絶えず誰かの道具になってしまいます」

 

s-162-esmode-01-1C—世界で通用する人材の教育をされているのですね。

 「我々は国際的な連携のある教育グループなので、世界的な視野で人材育成しています。トレンドは変化しますが、クリエイティビティ、オリジナリティ、技術をしっかり伝承し、自らの表現力の追求と、それを効果的にプレゼンテーションするノウハウを教育しています。クオリティの高い教育が求められる中で、教員に関してもできる限り最先端の感性や情報を生徒と共有できる現役でコレクションをしている人、クリエイティブワークをしている人にお願いしています。幸いなことに、生徒たちが国内外の様々なファッションコンクールで成果を挙げているのが、その証しでもあります。グランプリを獲ることが、エルメスやマルタン・マルジェラに入れるきっかけになっています。技術と文化の伝承を教育し、トレーニングしながら大きなチャンスを若い人たちに提供できる機関であり続けたいと思っています」

 

—日本のファッション業界、次世代デザイナーに期待することは何ですか?

 「日本は繊維を作る技術が優れているにもかかわらず、上手に活用していません。国が経済的にサポートしながら、若い人たちに独自性をもった付加価値のある物を作らせる機会を与えるのもひとつの方法だと思います。そして、創造した新しい価値を諸外国とコラボレートし共有することで、日本の繊維産業のよさを世界にアピールすることができます。さらに、評価されれば、連合になった部分にまた新たな価値が生まれます。日本の文化や歴史、経済力があれば、エルメスやシャネルと競合しようというくらいの戦略をもった企業が出てきても、十分可能性があると思います。日本人がもっているノウハウ、能力、技術は何も遜色ないわけで、要は高い意識をもった経営者やデザイナーが出てくればいいだけの話です。マーケットは多様ですから、積極的に参入していってもらいたいです」

 

—最後に仁野さんにとってファッションとは?

 「自己表現であり、自己トレーニングのようなもの。これだけ、独自性とクリエイティビティを求められるということは、まず既成概念を疑わないと新しいものは生まれません。新聞、テレビなどジャーナリズムで伝えられることを鵜のみにしないことです。興味のあるテーマがあったら、自分なりに調べ、納得したらそれをひとつの判断基準にすればいいのです。物を習うときは素直さが大切ですが、物の見方や考え方に関しては、簡単に信じない。他人の情報ばかりに頼っていると答えがすぐに出てしまい、本質に辿り着くことはできません。それぞれに自分の哲学観をもちましょう」

 

Information

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